デジタルで広がるスイーツ・プロフェッショナルの世界 杉山知之×辻口博啓

この6月から始まるSUPER SWEETS SCHOOL(SSS)では、インターネットを活用した学習である「eラーニング」(*) が導入される。デジタルで学ぶ、お菓子作り。もちろん、スイーツ業界では初めての試みだ。開校を前に、辻口シェフがデジタルコミュニケーションの第一人者である杉山知之氏を訪問した。対談のテーマは、これからの日本のスイーツとSSSの可能性。はたして、その未来とは?

文:川野美紀  撮影:関幸貴

大切なのは先生の顔が見えること

辻口:SUPER SWEETSでは、この6月にeラーニング・システムを介してみなさんに製菓を学んでいただくスクールSUPER SWEETS SCHOOL(SSS)を開校します。今回はデジタルコミュニケーションの先駆者である杉山さんに、いろいろなご意見をうかがいたいと思い、こちら(デジタルハリウッド東京本校)に来させていただきました。授業風景なども見せていただきましたが、みなさん真剣に学ばれていますね。そして、とても楽しそうです。

杉山:ありがとうございます。僕は15年前にデジタルハリウッド(デジハリ)を始めたのですが、当時はインターネット環境も充実しておらず、授業をeラーニング化することには不安がありました。やがてネットのスピードが上がり、動画の実用性が増してきました。当初、まるで紙芝居のようでしたが、画面上で講義中の先生の表情が見えるようになったことがひとつのブレイクスルーポイントだったと思います。オンラインの授業でも、受講生は先生が目の前にいる感覚が必要なんですよ。

辻口:先生の顔を見せることが大切なんですね。学校って、いかに受講生に満足度を上げられるかということが重要ですよね。「どうだ、こんなシステム作ったぞ!」というこちらの充実感だけ見せても、みんなが理解し満足してくれなければ意味がないですよね。

杉山:ただし、オンラインでは受講生のその場の反応がわかりません。そこで、僕たちは理解度を知らせることができる「ボタン」を使っているんです。文章を打ち込むのは大変だけど、対応するボタンをクリックするだけなので、生徒も直感的に状況を伝えられます。講師側の画面にはその状況が表示できるようにして、随時反応を見ながら授業を進めていきます。それでも、元は一方通行ですから、さっと過ぎてしまう時間もあります。ひとりでも後でしっかり復習できるテキストブックが必要になってきます。

製菓とデジタル教材の相性は?

eラーニングのデモンストレーションを行う辻口シェフ。その表情は真剣そのもの。

辻口:スイーツの世界でも、デジハリのようにeラーニングで人材をうまく育てることができるのでしょうか? これが今日、一番聞きたかったことなんです。手順をビデオで見せることはできても、実際の感触やにおいまでは伝わりません。問題もいろいろあると思うのですが…。

杉山:いろいろな研究の中で、現代人は必要な情報の90%を視覚から取り入れているというデータがあるんです。教材として、製菓の手順はビデオで細かく撮られていますよね。それでかなりの部分は伝わると思います。お菓子の作り方を写真で解説する本はたくさんありますが、静止画と文章だけではすべての流れを見せられません。手順1と手順2の間の状態を見たいのに、本には載っていないということもよくありますよね。

辻口:そうですね。我々は例えば「リボン状の生地」という表現をよく使いますが、そのやわらかさや質感などは静止画では表現できないものです。しかし、動画ならひと目でわかります。そのポイントがよくわかるよう、こちらもしっかりとした教材を作らないといけないですね。

杉山:撮影する人もお菓子作りのことを理解していないとだめですね。動画の編集の仕方も重要ですよ。

辻口:今では全国にお菓子教室がありますし、卒業生もたくさんいらっしゃいます。その中にはさらに高度な製菓技術を学びたいと思う方もおられるでしょうし、SUPER SWEETS SCHOOLはそういった人たちも満足できるような展開ができればいいと考えています。また、ふだんは会えない受講生たちと、生で触れ合う機会も必要でしょうね。

杉山:それは大事です。半年に1回ぐらいは、僕もオンラインの教え子たちと直接会える機会を作っています。

辻口:イベントなどでこちらから出かけるわけですね。そこで集まってくれた受講生と握手したり、抱擁したり?

杉山:さすがに抱擁まではないですが(笑)、実際に話すことで学ぶことへの理解もさらに深まりますよね。イベントに合わせて事前にコンテストを行い、作品を見て、優秀作品は僕が表彰し、アドバイスをします。みんなが学ぶ気持ちをわかち合うことが大事なんです。

辻口:わかち合う、ですね。勉強になります。

杉山知之プロフィール

デジタルハリウッド学校長・デジタルハリウッド大学大学院 学長・工学博士 杉山知之
1954年東京都生まれ。日本大学大学院理工学研究科修了後、同校の理工学部助手に着任。MITメディア・ラボ客員研究員として3年間活動し、国際メディア研究財団・主任研究員、日本大学短期大学部専任講師を経て、94 年10月、デジタルハリウッド設立。以来、クリエイターの育成、インターネットビジネスの発展に力を注いでいる。デジハリ創立10周年に開学した「デジタルハリウッド大学院(専門職)」は、日本初の株式会社による大学院となる。また、毎年、多くのデジタルコンテンツのコンテスト審査員も務める。デジハリ・オンラインスクール
デジタルハリウッドは、日本初の実践的産学協同のマルチメディアスクールとして設立。今年15周年を迎え、卒業生は4万人を超える。2004年開学の、株式会社立第1号となる「デジタルハリウッド大学院」、2005年開学の「デジタルハリウッド大学」、「デジハリ・オンラインスクール」を展開。IT・デジタルコンテンツ産業で仕事をするために必要なスキルを、スクールに通うことなく自宅のパソコンとインターネットを使って、リアルタイムに受講することができるのが最大の特徴。

ITスキルやデジタルコンテンツ制作スキルを身に付けたいと思っていても、近くにスクールがなく、通学にかかる時間や費用が理由で学ぶことができなかった全国の方々に「デジハリ・オンラインスクール」が新しい学びの場を提供している。
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