ミツバチからの恵み──ハチミツとプロポリス シャクマンデス×山崎泉×辻口博啓

自然の営みの中心にミツバチがいる

辻口: ミツバチは環境の要因を受けやすいと聞きますが、ストレスには弱いんですか。

シャクマンデス: はい、自然破壊による天候不順や農作物の農薬の影響で死んでしまったりします。ミツバチは、花の蜜を採取して巣箱で貯蔵しますが、体内で植物の分泌物と化合したり、水分を羽で飛ばして濃縮するなど、さまざまな工夫をしています。ハチミツはミツバチにしか作り出せない独創的な創造物なのです。
そして最も重要な役割は、花と花を受粉させること。ミツバチがいなければ、植物は実を作れません。もしもミツバチがこの世界からいなくなれば、野菜も、果物も、人間が食べている農作物の多くが手に入らなくなるでしょう。お肉もそうです。牛だって、食べる草がなくなれば育ちませんから。

山崎: 私は、「レザベイユ」のハチミツを知って、自然をこよなく愛しているシャクマンデスさんのお話を聞いているうちに、いかにミツバチの働きが生態系と密接か、ということを考えるようになりました。実は、一匹のミツバチが一生かけて作り出すハチミツは、わずかにティースプーン一杯分なんですよ。

辻口: 繰り返し飛び回って、集めてやっと……。感謝して食べないと。

シャクマンデス: ミツバチを見た時に刺すからいやだと言う人もいますし、虫だから気持ち悪いという人もいます。けれど植物を受粉させるミツバチは、この世界でとても重要な働きをしていて、自然の営みの中心にいるのです。そのまわりに私たち人間がいます。

山崎: ハチミツはミツバチにしか作ることができないと、シャクマンデスさんはよく言っていますが、こんなふうに人間の手が加わらずに出来上がる食べ物って、考えてみると他には見当たらないですね。

プロポリスとは

山崎: 日本ではあまり知られていませんが、ハチミツやプロポリスなどミツバチの生産物を使った自然療法のことをアピセラピーといいます。アピはラテン語でミツバチのこと。ヨーロッパではかつてハチミツを薬としていた歴史があって、そのせいかパリの「レザベイユ」のお店もどことなく薬局のような雰囲気があります。ハチミツやプロポリス商品を、リラックスしたい、のどの痛みを緩和させたいなど、店頭で相談しながら買う人がとても多いんです。

辻口: プロポリスっていうのは、どういうものなんですか。

シャクマンデス: すごく興味深い物質で、殺菌効果や抗酸化作用、防腐効果があります。歴史は古くて、紀元前の昔、エジプトでミイラをつくるときに腐敗しないように使われていました。

辻口: そうですか!そんなすごい力があるんですね。

シャクマンデス: バイオリンのストラディバリウスにニスとしても用いられています。年代もののバイオリンの質感にやわらかになじみ、木材の割れを防ぐような働きをします。

辻口: 銘品として知られるバイオリンですね、興味深いです。プロポリスはどうやって作られるんですか。

シャクマンデス: ミツバチが樹脂植物のつぼみの周囲を採取して、巣箱に持って帰って作り出すものです。やはりねばねばしています。ミツバチはプロポリスを巣箱の壁に塗って、微生物が繁殖しないようにします。穴を塞いだりするセメントの役割もあります。
巣箱はあたたかくて、雨も入らず、甘い蜜がある。そこを狙ってネズミがやってきます。ミツバチは刺してやっつけるとこまではできますが、重いので死骸を外に運び出すことはできません。そこで腐敗しないようにプロポリスで覆ってしまって、巣箱の環境を清潔のままに保つのです。春になって巣箱を開けると、ネズミやヘビがそのままのかたちで残っていますよ。

辻口: えっ、ネズミをミイラにしちゃうんですか。ネズミにしてみたらとんだ災難ですね。それだけの強い抗菌効果や殺菌作用があるということに驚きました。